音楽のおべんきょうφ(.. )メモメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

日本ポップス伝2(14) 「オッペケペー節」から「東京五輪音頭」までの100年史

1999年 大瀧詠一の日本ポップス伝2第四夜より

 もう一度明治の頭に戻りまして、「オッペケペー節」に影響されまして大正時代に人気がありました石田一松さんていう方がいらっしゃいまして、この方が「のんき節」という歌で大ヒットしました。

 
 面白い歌ですよね。大正時代からアメリカの大統領が変わって景気がよくなるなら毎年選挙をやってくれということで、これが大流行したんです。明治の初期にやりました唱歌教育とかいろいろなことがありましたが、あれは政府が決めたことですけれども、一般国民はこういう歌を好んで聞いていたわけですし、学校教育を受けられる人も限られていましたし、レコードも高いですから、流れてくる歌にいろいろな歌詞をつけるとか、替え歌にして歌い遊ぶとか、そういうようなことが自由に行われていたからこのような発展を見たと思うんですよね。「のんき節」のメロディー自体は添田唖蝉坊が作っていますが、そこに石田一松の詞をのっけたということなんですよね。戦後にこの「のんき節」をカバーした人がいます。もちろん歌詞は変えてますが。映画の中で使われていますけれども、その映画のセリフのところから行ってみたいと思います。「のんき節」。
 
 植木等さんですけれども、植木さんは戦後の昭和の演歌師だったんですね。これは会社をクビになって流しをして稼いでるというシーンなんですけれども、今の時代もこういうのになってきているのではないかという感じがなきにしもあらずですけれどもね。無責任が大事だと言っていましたけれども、この人ほど日本の歴史で無責任が大事だということを強調している人はいないと思います。「無責任一代男」。



 世の中たいてい責任があるというような人の方が無責任なわけでしてね。出だしは「俺はこの世で一番」というのがありますけれども、これは前にネタがあるんですね。「俺はこの世で一番」で始まる歌があります。それを聞いてみたいと思います。「洒落男」。


 これが榎本健一さん、略してエノケンさんですけれども、「俺は村中で一番」って歌ってましたね。それで、植木さんに書いていたのが青島幸男さん。青島幸男さんが村中よりはもっとデカく行こうということで、この世で一番になりました。今の曲もアメリカの曲のカバーなんですよね。アメリカの曲のメロディーを持ってきて日本語をのせるというのは唱歌教育でもありましたしね。エノケンさんは浅草オペラのナンバーワンの人気の人でしたからたくさんそういう曲もあったんですけれども、街の演歌師の人達なんかも、どこのものとも知れずに伝わってくるメロディーがありますよね。それで適当な歌を作って歌詞をのせて歌を歌っていたというのがあります。次もアメリカの歌なんですけれども、「Marching Through Georgia」という曲がありまして、これが「東京節」という風にタイトルが変わりました。

 面白い歌でしょ。歌作りを自由にやっていたし、基本的には歌なんて自由なものですよね。戦後に女性のアイドルシンガーであった、女性のアイドルシンガーもこういうような曲をカバーするような、とにかく1960年代前後は結構ワイルドな時代だったんですよ。「パイノパイノパイ」。


 歌は森山加代子さんでアレンジは中村八大さんですけれども、出だしは「アルプス一万尺」で、ちょっと明るい西田佐知子という感じがしました。テーマに戻すと、本格的な帝劇のオペラが浅草に流れてきたということで、当時のオペラの歌、オペラメドレーを映画の中でやっているんですね。歌っているのは、エノケンさんと岸井明という方でございます。

 これが「孫悟空」という映画でして、山本嘉次郎さん監督で助監督が黒澤明さんなんですよ。戦中のものですけれども、これは面白くて必見ですね。浅草でやっていましたからたくさん寄席もあるわけですね。寄席の人達もオペラを取り上げるんですよ。取り上げられたのが「カルメン」なんですね。「カルメン」と言えば作曲者はジョルジュ・ビゼー(Georges Bizet)ですから、スペインの方ですね。歌っているのはあきれたぼういずで、「珍カルメン」という曲でございます。

 このように「カルメン」がどんどん変化していくわけですね。この人達は浪曲が入っていましたけれども、いろいろなものを浪曲にするというひとつの芸なんですね。リーダーの川田義雄さんが浪曲が得意だったんですね。それでいろいろなものを浪曲にしたんですけれども、次の曲を聞いてみましょうか。ディック・ミネさんの「ダイナ」です。



 洋楽系シンガーは、日本語をゆがめることが必死条件ですよ。あるいはフェロモン系シンガーの第一号といっていいかもしれませんけれども、この曲があきれたぼういずの手にかかるとどうなるかということです。

 服部良一さんもこの頃ジャズ浪曲というのをやっていまして、今でもラップ浪曲を国本武春君がやってますけれども、この頃はこれがすごい人気だったんですよ。浪曲も桃中軒雲右衛門から始まっていろいろな浪曲師がいたのですけれども、広沢虎造という方がおりまして、この人がとにかく大人気だったんですよ。「次郎長伝」。


 清水次郎長が出てくるまで長い長い。この虎造節がヒットしまして、昭和10年ですが、清水次郎長誕生120年記念がありまして、これを記念して映画がつくられました。「東海の顔役」という作品で、市川右太衛門さんが主演だったんです。原作は村松梢風という方です。もちろん静岡の方ですね。これのテーマソングということで、東海林太郎さんが歌ったのがこの歌です。「旅笠道中」。


 スティール弾いてるのはディック・ミネさんです。東海林太郎さんは前年国定忠治を歌った「赤城の子守歌」を歌って、これで清水次郎長を歌って、これで股旅物というジャンルが出来上がるんですね。今の曲を作曲されたのが大村能章さんという方で、この人は海軍軍楽隊出身で、松竹オーケストラに入団したとありますから、万城目さんの先輩ということになるのでしょうかね。この人が、股旅物の和洋合奏の形を完成させた人なんですけれども、その代表曲を聞いてみたいと思います。「野崎小唄」。


 この歌は大阪の野崎市の観光宣伝用に依頼された曲なんですね。間奏のところなんですけれども、これは義太夫節の一節なんだそうです。「新版歌祭文」の中の「野崎村の段」のメロディーを入れたんですね。最初意図的に入れて、どれがだんだん根付くという形ですね。この頃、映画界で大人気だったのが林長二郎といいまして、長谷川一夫さんだったんですけれども、その人と人気を二分したとされる高田浩吉さんという方がいまして、この人が主演して主題歌ということで、歌う映画スターの第一号だったんですが、それの代表曲で「大江戸出世小唄」というのがあります。


 作曲が杵屋正一郎さんという方で、杵屋というのは長唄の三味線方の伝統的な苗字で、だから本職の方だと思うんです。この人が、高田浩吉さんが主演するということで作ったんだと思いますね。小唄と言いますと、江戸から明治までずっとあったんですけれども、これは創作小唄ですよね。いろいろな小唄がありますけれども、昭和初期にできた小唄ということで、代表的な小唄を取り上げてみたいと思います。「祇園小唄」。


 昭和4年のものですね。『祇園夜話』という小説の映画化で、それのテーマソングだったんですけれどもね。歌っているのは葭町二三吉さん、藤本二三吉さんなんですけれども、この人は7歳から常磐津を習っていたということで、小唄というのは芸人さんの得意なものにだんだんなっていくんですね。歌謡界で言えば、芸者歌手という言われ方をして、女性の日本調の人達が以前の伝統的なものを守るというような形になったんですけれども、次の曲も創作民謡でした。「ちゃっきり節」。


 これも静岡の電鉄会社のCMだったんですけれどもね。作曲は町田嘉章といって、芸大出て新聞記者になってNHKに入りまして、民俗学者の柳田国男さんに師事をして、録音機を抱えて全国の民謡を録音したんです。『日本民謡大観』というのを編纂しまして、その方の創作民謡なんですね。静岡に行くとこういう背景のものが目に浮かぶと思いますが、新作だったんですね。新作といいますと、戦前の創作音頭の決定版という風に言いますとやはりこの曲だと思います。「東京音頭」。


 これが小唄勝太郎の歌で、いい声なんですよ。男性との掛け合いだったんですね。市丸さんも勝太郎さんも信州の芸者さんだったんです。勝太郎さんも清元江戸小唄の名取ということで、「佐渡おけさ」がデビュー曲だったようですね。このうよう新作民謡がじゃんじゃん作られるというのが戦前のパターンなんですね。それが定着して、戦後も盆踊りとなるとそういう歌が使われるというようなことがあるわけです。この「東京音頭」が創作民謡の中では最大のものだと思います。さて、戦後にこの「東京音頭」の存在と同じような音頭が現れるんですよ。それはこの曲でございます。「東京五輪音頭」。



 これが昭和39年に開かれた東京オリンピックの「東京五輪音頭」だったんですけれども、「軍艦マーチ」の瀬戸口藤吉の孫弟子の古関裕而さんは「オリンピック・マーチ」で、そしてこの曲が古賀政男さんなんですね。戦前は中山晋平、戦後は古賀政男ということで、これから4年たちますと、明治100年目だったんですよ。だから、「オッペケペー節」から「東京五輪音頭」までちょうどこれで100年たったということでございました。

Comment

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
記事検索
スポンサーサイト
スポンサーサイト
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

音楽のおべんきょうφ(.. )メモメモ