ラジオFMのメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

日本ポップス伝2(15) 唱歌ー国民歌謡ーラジオ歌謡の流れ

1999年 大瀧詠一の日本ポップス伝2第五夜より

 最終回はまずはこの曲から始めてみたいと思います。



 これは滝廉太郎の「花」ですけれども、唱歌教育から日本の明治の教育が始まったということでいろいろやってきました。滝廉太郎さん、この曲を作ってから2年後の25歳で亡くなっています。この人がずっと生きてると、中山晋平さんとライバルになったんじゃないかとおもいますけれどもね。こういう自作の唱歌がありましたけれども、この唱歌から例えば歌曲という言われ方をするような曲も出てきました。



 これは「からたちの花」ですね。山田耕筰さんの作曲ですけれども、これはだんだんクラシックというジャンルがありますけれども、藤原義江さんとか五十嵐喜芳さんとかたくさんそういう歌い手さんがいらっしゃいますけれども、女性でも三浦環から最近はオペラ歌手の方々がボリュームのある声を出されておりますけれども、この流れがあると思います。それから、「花」「からたちの花」のラインは、さらに童謡や唱歌の流れに行くと思いますけれども、ひとつこの曲を聞いていただきたいのですが、これは「早春賦」という曲でございます。



 作曲は中田章さんという方です。こういような「花」や「からたちの花」というラインに似たものがあると思いますけれどもね。それから、童謡運動の中からいろいろな曲がありますけれども、「浜辺の歌」を選んでみました。



 ななかないい曲で、音楽的には難しいところもありますけれども、少年少女が歌うとまた別な感じがありますし、こういう風に歌うと歌曲的、クラシック的になります。こういうような唱歌から童謡の流れが、ラジオで国民歌謡というのが始まりまして、その国民歌謡に受け継がれたのではなかと思います。これも代表曲を聞いてみたいと思いますが、東海林太郎さんが歌うんですけれども、「椰子の実」でございます。



 先に島崎藤村の詞があって、それに曲をつけるということだったんですよね。東海林太郎さんは国定忠治とか歌ってた人ですけれども、燕尾服を着て直立不動っていうスタイルだったんですが、クラシック歌手になりたかったんですよね。本当は。早稲田で音楽学校は出ていないんですけれども、なんとしても歌手になりたいということで、満鉄で10年近く仕事をしていたんですけれども、わざわざ戻ってきて歌手の道に行った人です。だから、何を歌っている時でも、自分はオペラ歌手になりたかったということで、直立不動で燕尾服を着て歌うということなんです。だから、国定忠治も「椰子の実」もこの人にとっては同じだったんじゃないかという気がしますけれどもね。こういう唱歌から国民歌謡の流れがありましたが、こういうようなのではなくてもう少し少年少女向けといいますか、そういうような曲もありました。



 これは「森の水車」で童謡だと思っている人もいるかもしれませんが国民歌謡だったんですね。歌っているのは高峰秀子さんで、この人も少女女優の走りの人ですよね。本当は吉永小百合のもとはこっちなんですよね。歌を聞いてると広末涼子っぽい感じがしますけれどもね。この戦前の国民歌謡が戦後はラジオ歌謡という風に名前が変わりまして、ラジオ歌謡の中から何曲か選んでみたんですが、「森の水車」を作詞作曲しているのが米山正夫さんという人なんですけれども、その米山さんがまた作詞作曲をした曲があるので、それを聞いてみましょう。「山小屋の灯」です。



 「湯の町エレジー」を歌った人ですけれども、「山小屋の灯」のような歌も歌ったんですね。作家によって曲が違うと歌唱法も変わってくるという感じがありますけれども、なんとなく全体的な流れとして共通したものがあるように感じ取られるのではないかと思います。次が、橋本治さんがおっしゃるところのこれがニューミュージックの祖ではないかというところの曲で、またラジオ歌謡の流れの中にある曲ですけれども、岡本敦郎の「白い花の咲く頃」でございます。



 「花」から始まって「からたちの花」、そして「白い花の咲く頃」という風に、だいたい花がテーマに選ばれるんですね。次もまたラジオ歌謡から出たヒットでございます。「雪の降るまちを」。



 中田喜直さんが作曲ですけれども、中田喜直さんは「早春賦」を作った中田章さんの息子さんなんです。ですから、「早春賦」から「雪の降るまちを」に、ほかに「夏の思い出」や「ちいさい秋みつけた」があって、中田喜直さんは春の歌だけは作ってないんですね。親父の「早春賦」があるからということで、親子で四季を完成させているということがありますね。中田喜直さんは「めだかの学校」とか「かわいいかくれんぼ」とか童謡をたくさん作るわけですけれども、このような「花」から国民歌謡、ラジオ歌謡とひとつの流れがありますよね。こういうような流れの中に沿ったといいますかね、歌謡曲の中にもこういうような清潔感あふれるタイプの曲があるんですよね。それを聞いてみましょう。「水色のワルツ」。



 格調高いですよね。高木東六さんの曲ですけれども、歌謡曲の中に混然としてあったわけですよね。こういうタイプの歌謡曲はほかにもジャンジャンあるわけですけれども、次の曲は曲としても有名ですけれども、この流れにある曲だと思います。大津美子さんの「ここに幸あり」。



 以前は結婚式でも歌われていましたね。これは大津美子さんで、先輩に松島詩子さんという方がいて、その流れの歌唱法ですね。この二葉あき子、大津美子という流れの中で捉えますと、次の人のこの流れだと思います。岸洋子さんで「夜明けのうた」です。



 作曲はいずみたくさんなんですけれども、こういうような歌唱法になりますとシャンソンなんかにもクロスしてきますね。「雪のふるまち」を歌っていた高英男さんもシャンソン歌手でしたからね。唱歌と歌謡曲のこういうタイプのものとシャンソン、越路吹雪さんの感じとも似ていますから、こういうのがだいたい似た感じのラインなんじゃないかと思いますね。いずみたくさんと言いますと、いずみたくさんの歌でビューしました由紀さおりさんがいらっしゃいますから、この岸洋子さんの次は由紀さおりさんという風に流れてるんじゃないかと思います。その後はなかなか探しにくいんですけれども、僕が思うに、「あなた」を歌った小坂明子さんとか、ああいうタイプのものに引き継がれていくんじゃないかと思います。最近女性の二人組なんかがときどきでますけれども、小坂明子の流れの気がしてしょうがないですね。

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