ラジオFMのメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

テイラー・スウィフト(Taylor Swift)に学ぶ、音楽業界の悪いおじさんに騙された時の対処法

20210501 

中村明美「テイラー・スウィフトの「Fearless: Taylor's Version」を紹介したいと思います。この作品は言わずと知れた彼女が18歳の時に発表した、10年以上前のセカンドアルバムになります。アメリカだけでも1000万枚以上売れています。カントリーから始まって、カントリーポップと、ポップの要素も入れて大ブレイクした記念碑的な作品であって、当時は史上最年少、20歳の時にグラミー賞の最優秀アルバム賞を受賞してしまったという大作です。これを彼女が最近再レコーディングして発表し、全米チャート1位、全英チャートでも1位を取ってしまうという前代未聞の記録を打ち立てました。記憶も新しいかと思いますが、「folklore」と「evermore」という作品を二枚出していて、290日以内に三枚連続で1位を取ってしまったという、ビートルズ(The Beatles)が持っていた「Help」「Rubber Soul」「Revolver」三枚で340日間で1位をとったらしいのですが、その記録を50年ぶりに破ってしまったという驚異的な作品です。再レコーディングしたといっても何か歌詞を変えたとか、アレンジを新しくしたとかいうことはほとんどなくて、かなり忠実にそのままレコーディングすることを目指したということが明らかなので、特に新しい感じはしません。当時の未発表曲6曲があって、それがアーロン・デスナー(Aaron Dessner)とジャック・アントノフ(Jack Antonoff)という最近二作をプロデュースした二人と一緒に作っている、それが収録されているというものです。ほぼ再現したのに1位をとってしまって、テイラー・スウィフトはほんとすごいなという感じがします。アーティストが再レコーディングするということはテイラーにはじまったことでもなくて、60年代からエヴァリー・ブラザース(The Everly Brothers)がある意味発明したと言われているんですが、レコード会社を移籍するときなんかによく再レコーディングするんですけれども、原盤権を売られてしまって、それの価値を下げるためにやっているということです。テイラーもそういう意味があって、それを静かにやってしまうアーティストも多いのですが、彼女の場合は裏で何が起きていたのかを全部ファンに語っています。まず、自分がデビューの時に契約したレコード会社の人に自分の原盤権を買いたいと言っていたのに、勝手に売ってしまったんです。しかも、自分がカニエ・ウェスト(Kanye West)と戦ってキャリアの中で一番落ち込んでいる時に、カニエの裏にいたスクーター・ブラウン(Scooter Brown)という業界で最も成功しているマネージャーの人に売ってしまいました。その人にだけは売らないでくれと言ってたのに、知っていて売ってしまったという。さらに彼らは、買ってよかったねみたいな、バーの前で大人の男が二人ニコニコしている写真を公開しました。テイラーも指摘していたんですけれども、業界でどんなに成功してもこういう人達に買われているんだ、商品でしかないんだよねみたいな。しかも、女性としてなめられているというか、下に見られているというのをファンに打ち明けていたので、ファンがテイラー頑張れ、発売したら一緒にテイラーを盛り上げてあげる、みんながテイラーをサポートしてあげるという意味で聞いてあげたということです。しかも、歌詞が15歳の時の恋愛などをについて歌っていて、31歳の彼女が歌うとどうなのかなというのもあるんですけれども、「folklore」と「evermore」という作品は彼女を次の次元に進めるような未来が開かれる作品ですごくやった感があったので、今振り返ってみてもちょうど懐かしい感じで、タイミング的にもピッタリで、コロナ禍に自分を進める作品を二作出して、過去をちょうどいい感じで振り返るという、スタジアムツアーをできなかった時間をメチャクチャ有効に使っています。」

渋谷陽一「アレンジを変えずにほとんどそのまま再現しているってすばらしいと思いますね。何かやりたくなるものだけれども、そういうものじゃないんだっていう。過去の自分が原盤権を奪い取られたものを買わずに、これを買ってもらって、しかも過去の作品と同じような感動を、未発表曲も含むのでより大きな感動を含むものだっていうのはすごね。頭の良さが普通じゃないですね。」

中村「アーティストとしての才能のみならず、ファンとどうやってコネクトしていけばいいのかということがすごく分かっていて、面白いのがレビューがバッと出ているんですけれども、ほぼ同じ作品であるにもかかわらず、出たときが75点くらいだったのが、85点くらいになっているという、テイラー自身の価値が10年以上たって上がっている証拠だなというすごい面白い結果になっています。」

渋谷「それではテイラーの作り直しバージョンを聞いていただこうと思います。You Belong with Me。」



渋谷「テイラー・スウィフトの歌いなおしアルバムのストーリーを紹介したんですけれども、ジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)が「この業界には他人の不安定な状況を餌食にして自分の利益に使う人がいるんだ。そういうことをされると怒ってしまうわけでね。夢を抱えた怒れる若者はそうやって世界に疲弊しなりたくない人間になってしまう」と、自分が依存症で苦しんでいる時期の事を語っています。テイラーはそういうことにはならなかったけれども、やっぱり戦いは延々続いていて、ポップミュージックのスーパースターが成功したらそれで一件落着ではないという現実は、いろいろな形で僕らは見てきました。ジョン・フォガティ(John Fogerty)なんてそれで何十年も苦しむことになるんですけれども、やっぱりそういう部分というのは、このもっともポップミュージックの最前線にいるジャスティン・ビーバーであったり、テイラー・スウィフトであったり、これ以上の成功はないというポジションにいるスターたちもやっぱり向き合わなければいけないということです。でもだんだんだんだん変わってきているという感じがしますね。そしてこういう事がすごく正面をきって戦われているという事も、時代が変わったなぁと思います。」

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