音楽のおべんきょうφ(.. )メモメモ

NHK-FMWorld Rock Nowでの渋谷陽一氏の解説で面白かったものをメモしてゆきます。

ラッパーの引退宣言、もはや休止ですらなくなる

20210821

 ロジック(Logic)の新作です。ロジックって引退したんじゃないのって、本当にそうですよね。絶対に戻ってくるとは思ってましたけれども、早い。

  参考)、ロジック(Logic)に学ぶポジティブで明るい引退

 引退したのが去年の7月で戻ってきたのが今年の8月で、その間に結構いろいろな作品を作っていて、引退どころか休止にもなってないじゃないかよと、でもファンにとってみればうれしいです。「Bobby Tarantino III」という作品を出してくれて、これは力の入った作品で12曲入っていていいんですよ。1曲目は「俺は戻ってきたぜ」っていう曲、そして2曲目は「戻ってきたことをガタガタ言うヤツは許さん」みたいな「何が悪い」っていうvaccineっていう曲で、そして3曲目がGet Upっていう「でも頑張ってやるぜ」っていうこの頭の三曲がすごいのですけれども、そのうちの「戻ってきたぜ」というIntrollとGet Upを二曲続けて聞いてください。




 彼自身が言っておりますように、自分は音楽を作ることが嫌になったんじゃなくて、結局業界が嫌だったんだなぁと。本来的に自分の表現としてのアウトプットはしっかり作っていかないとやっぱり駄目なんだという実感は彼の中にあるのではないのでしょうか。「Bobby Tarantino III」ということで、みなさんもご存じのように2016年の「「Bobby Tarantino」から始まっている連作シリーズで、これがきっと最終章なんでしょうけれども、そういうような形の位置づけの作品で、新しいキャリアのスタートをちゃんと作ったというのも、やっぱり今までの中から陸続きの作品活動が自分の中では続いているという、そういうようなメッセージでもあるんじゃなかなぁという気がします。続いて聞く曲がGod Might Judgeという曲なんですけれども、これはもう女性賛歌というか、女性に対するリスペクトで、神様は君をジャッジするかもしれないけれども、僕は君のために何でもやるぜっていうそういうロジックのナンバーでございます。


 ロジックが帰ってきましたけれども、帰ってきたといっても1年ですからね。普通に割と短いインターバルで新作が発表されましたって言ってもいいのかもしれませんが、でも最高です。ロジックも自分の人種的なアイデンティティーの獲得という意味ですごく悩んだ人です。父親が黒人、母親が白人、そしてヒップホップをやる時に「お前は黒人でもないのに何でこういうのをやるんだ」と言われつつも、でも俺のこのスキルと音楽をどう思うんだという所で戦いながら、本当に現在の地位を獲得してきたロジック。今度の作品もすばらしいです。

ジャクソン・ブラウン(Jackson Browne)、齢72歳にしてまだ青臭い

20210807

 ジャクソン・ブラウンは言うまでもなくアメリカを代表するシンガーソングライター。ブルース・スプリングスティーン(Bruce Springsteen)だとかニール・ヤング(Neil Young)だとかそういうアーティストと同じくレジェンドの粋に達しているアーティストでございます。1948年生れ。僕より3つ上で現在72歳というその年齢でも、これだけのすばらしい力強い作品を出してくれているというのはすごいなと思います。アルバムの一曲目をこれからかけるんですけれども、Still Looking for Something、72歳のシンガーが、でも僕は何かを探し求めているんだという曲からアルバムを始めているというのはすごいなと思います。

 私は今も何かを探し求めている
 街の中で街灯に照らされて
 私は夜の中今でも何かを探し求めている
 何かをあきらめてしまったかもしれない
 何かを捨てなきゃ手に入らないものだってあるんだ
 どんなものでも明かりにかざしてみる事ができる
 自由しか見つけられないとしたんだったら
 それはそれでいいじゃないか
 うんと小さい時から分かっていた事
 この世は尖っていてもいつかは丸く削られていく
 あなたの夢は足元の削りカスの山
 私はどっかり落ち着いてしまったりしないよう最善を尽くそう
 その時試されるのは私の気概
 選択の自由を手放したくない
 たとえ願いだけで終わるとしても



 このアルバムは半分以上がすでに既発表曲なんですけれでも、これは新曲ですけれども、きっちりと書き溜められたナンバーが72歳という年齢の中で作られているのはすごく励まされます。続いてStill Looking for Somethingの次に聞く曲は、Until Justice Is Real。青臭いといえばこれほど青臭いタイトルはなくて、正義が実現するまでというそういうタイトルで、ジャクソン・ブラウンは活動家としてもよく知られていて、まさに彼自身の信念、72歳にしてこれだけ青臭いことをこれだけリアルにきっちり歌えるというそんなナンバーを聞いていこうと思います。

 あなたのテレビで流れたりはしないし
 あなたの電話で知らされることもない
 真実を知りたかったら自分で見つけるしかない
 そう簡単には見つけ出せないかもしれない
 自由の国では真実はタダではない
 タダでは見つけ出せないんだ
 自分自身に問いかけるのが一番だ
 いい生活って何?
 豊かさって何?
 私が見ようとしているのはどんな未来
 その未来のために私にできる事は
 流れ続ける時時は川のよう
 時は走り去る列車のよう
 時は日ごと解けていくヒューズのよう
 デモクラシーって何?
 いったいどうなっているのか?
 どんな風に見える?
 いったいどんな感じ?
 一生懸命努力して正義が実現するまで踏ん張り続ける
 正義が実現するまで




コロナ禍のロックダウン期間は若いクリエーターにとって生産的な期間であった説

20210731

児島由紀子「今のロンドンのクラブシーンで盛り上がっているプロデューサー二人のユニットで、ジャングル(Jungle)というユニットが新作を出すんですよ。コラボレーターもニューヨークのラッパーとか最先端のクラブシーンの人をいつも起用して。これまでアルバム2枚を出してるんですけれども、トップテンに必ず入っていますし。」

渋谷陽一「すごく聞きやすくポップですしね。すごくいいと思いますね。」

児島「ユーロディスコっぽい曲もあるし、オールドスクールなヒップホップな所もあるので、アメリカでもヨーロッパ諸国でも受けているみたいですよ。」

渋谷「あまり最先端すぎずにちょうどいい感じで、気持ちよくしてくれる所がいいと思います。」

児島「そう思います。やっぱりプロデューサーですよね。今のシーンをよく分かっています。」

渋谷「今ロンドンのクラブシーンってどんな感じなんですか。」

児島「19日からすべてのロックダウン規制が解除になったんです。それでもうクラブもライブハウスも人員制限なしでオープンできるようになったんです。」

渋谷「いろいろジャングルも活躍の場が広がって。」

児島「そうなんです。今度のアルバムも、ポストソーシャルディスタンス時代のためのディスコレコードというテーマです。」

渋谷「キャリアもそれなりにあるし、イギリスでも安定した人気と評価がある人達なんですよね。」

児島「そうなんですよ。なんと、ノエル・ギャラガー(Noel Gallagher)兄貴も以前から注目していたユニットなんです。」

渋谷「すごい。ノエルが評価し気に入っているクラブミュージック。面白いですね。」

児島「ノエルもこういうサウンドをやりたかったんだろうと思います。」

渋谷「なるほど。こういうサウンドというか、こういう要素はすごく取り入れようとしていますよね。ソロユニットでは。」

児島「過去数年そうでしたよ。」

渋谷「イギリスって豊かですよね。いろいろな多様に活発に出て来て。」

児島「ロックダウン期間がかえって若いクリエーターにとっては生産的な時期になったようですよ。」

渋谷「なるほどね。例えばジャングルって単独でライブとかやったりとかそういう活動もしているんですか。」

児島「やるんですよ。すべてのロックダウン規制が解除されたので、これからフェスシーズンに向けて、自分たちのツアーもやるんじゃないですか。」

渋谷「なるほどね。これ日本でも受けそうな気がしますんで、いつか見てみたいなぁとそんな期待が膨らみますね。」

児島「日本でフェスが開催できるならば即ブッキングしたいアーティストだと思います。」

渋谷「それでは聞いていただきましょう。ジャングルでRomeo (feat. Bas) 。」




マネスキン(Måneskin)はなぜ売れたのか?

20210731

 マネスキンでI Wanna Be Your Slave。



 新人バンドのマネスキン。みなさんの方が先に知っていたのではないかと、そんな感じがします。いろいろなところで音がかかり、日常の中でヒット曲が存在している、もうそのチャートは邦楽がほとんどを占めているんですけれども、その中に突然洋楽がそこに入ってきてチャートの一位になったのがこのマネスキンなわけですよ。むしろ業界関係者はなんで突然これが一位なのみたいなそういう驚きを持って迎えたわけでありまして、恥ずかしながら私もその一人です。実はこうした現象は全世界で起きていまして、もともとイタリアの二十歳の新人バンドなんですけれども、ユーロビジョン・ソング・コンテスト(Eurovision Song Contest)で優勝したことによって大変名前を知られるようになった若いバンドです。イギリスでもブレイクし、アメリカでもブレイクし、無論ヨーロッパではすごい人気で、日本ではプロモーション的なものは何もないまま口コミレベルで大爆発をしてしまったというそういうアーティストでございます。曲を聞けば何故だかがよくわかるということで、もう一曲聞いてください。これがブレイクのきっかけとなった大ヒット曲でございます。Zitti e buoni。



 市場が生み出したというか、ユーザー自身が自分たちで発見し、自分たちで盛り上げてここまで持って行ってしまった、ユーロビジョン・ソング・コンテストという2億人が見る巨大なコンテストなので、これで優勝したということは圧倒的なパブリシティー効果があったのでしょうけれども、でも全世界的な広がり方を見ると、まさに聞き手自身が聞き手自身のエネルギーにおいてここまで持ち上げたというそういうそういう感じがしますね。この結果を見て、僕なんかはすごいなと、このバンドって面白いなと思ったんですけれども、ではこれを最初に聞いて、今の時代これだって僕はマネスキンを推すことができたかというと正直自信はないですね。面白いとは思ったかもしれないけれども、いやいろいろな意味でインパクトがある、そういう存在だと思います。ファッションも、グラムロックなのか古のロックンロールなのかなんなのかよくわからない、所謂グラマラスな、古典的なオールドスクール以前のロックのイメージを体現しているようなそういうようなファッションで、音も基本的にはハードロックというか、そういうような体裁ですけれども、まあヒップホップやレゲエやファンクとかそういう要素も割とガンガン取り入れて、若い世代の空気感の中で自由に作られているけれども、でも基本はメロディーとロックの快感原則に基づいて、基本の基本を押さえていこうと、後は何もいらないぜと、もう一曲聞いていただこうと思います。Lividi sui gomiti。



 母国語で歌っていて、やっぱりローカルであるということも、例えばBTSも韓国語で歌って世界を征服したわけですけれども、やっぱり自分たち自身の価値観の中において、そして自分たち自身の地域性の中において、そこを深堀していくことによって結局すごく普遍的なものを獲得していくというそういうありようというのが面白いなぁと、いろいろな意味で感慨深いバンドでありました。


ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)のライブ盤を聞いてコロナ後のフェスを考えよう

20210724 

 ローリング・ストーンズの「A Bigger Bang Live on Copacabana Beach」を紹介したいと思います。これはリオデジャネイロのコパカビーチで行われたローリング・ストーンズの伝説的なライブです。150万人集めたのですよ。2006年2月18日に行われたわけでありますけれども、すでにドキュメンタリーDVDが出ていて、それをもういっぺんリマスターして出して、その時に4曲だけ収録されていなかったナンバーも全部入れて、完全版で出しました。今なぜこれを出したのかというのは割と容易に想像がつくわけで、今は何もできない、それこそ150万人の密なライブというのはそれはどこの惑星の話だという状態の中で、ローリング・ストーンズとしては今これを出してみたかったんだろうなぁと。前回には収録されていなかった未発表曲もこれから紹介したいと思います。まずはこれを聞いてください。Tumbling Dice。


 盛り上がっています。150万人ですからね。ビーチだからものすごく長いのですよ。そこにいっぱいスピーカーを立てて、ビジョンを立てて、遠くまで届くように音の時間差を修正するためにちゃんと計算して全体の高揚感を構成していくという、非常にエネルギーに満ちたライブです。でもローリング・ストーンズが今出したメッセージは、こういうライブを取り戻そうぜというのとはちょっと違う感じで、本当に我々は150万人あつめてこれをやって、いったい僕たちの何がそうさせて、これからコロナ後これをもういっぺん僕たちは模索するのだろうか、それとも違うものなのだろうかと、一つの歴史的な検証の素材として今これが我々の前に突き付けられているような気がしてしょうがいないですけれども、もう一曲聞いてください。Sympathy For The Devil。


 この時代においては実現不可能なイベント。でもやっぱりこういうものが持つエネルギーとか、こういうのがあったからこそ成立した表現とかいろいろあると思うので、やっぱり今の時代にこういうドキュメンタリーとかライブの映像を見るといろいろなことを考えてしまいますね。自分自身がフェスのオーガナイザーをやっているみたいな所もあるからなのかもしれないですけれども、絶対この時間を取り戻したいというそういう思い、きっとこれからどんどん可能になっていくと思うのですけれども、と同時に、ただ単に同じものがただ再生されるのとはまた違うのかなと、そこには僕たちの工夫が必要なのかなぁといろいろな思いがあります。
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